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一歩を踏み出すまで
皆さま ごきげんよう。
19日・20日の文化祭には、多くの皆さまにご来場いただき、誠にありがとうございました。
生徒たちが準備を重ねてきた成果を、お楽しみいただけましたでしょうか。
さて、今日は少し時をさかのぼって、この夏のお話を綴りたいと思います。
中学1年生の林間学校に引率した際、強く心に残った体験がありました。
「フォレストアドベンチャー」です。森の立木を生かしたコースで、樹上に設けられた揺れる足場を渡ったり、ロープを頼りによじ登ったり。文字通りのアドベンチャーでした。
その中に、ジップラインがありました。私にとっては初めての体験です。
ハーネスを装着し、カラビナをワイヤーにつないでいるので、安全だということは頭ではわかっています。それでも、いざ踏み出そうとすると、足がすくみ、身体が動きません。
「いち、にの、さん」と自分に声を掛けても、どうしても足を離すことができないのです。
周りでは、中学1年生が軽々と進んでいきます。
「先生、頑張って!」という声も聞こえてきました。
その時、ふと思いました。
「頑張って」と言われても、頑張れないときがある。
他の人には何でもない一歩が、自分にはどうしても踏み出せないことがある、と。
私はこれまで、生徒たちに「大丈夫、頑張ればできるよ」と、ずいぶん声を掛けてきました。
その言葉が届いたと思うこともあれば、届かなかったと感じることもありました。
けれど、あの時の自分を振り返ると、「届かなかった」と簡単に決めてよかったのだろうかと思います。
傍から見れば、私はただ立ちすくんでいるだけ。少しも前に進まず、応援の声にも応えられません。
しかし心の中では、ずっと自分自身と格闘していたのです。
結局、私は「やるしかない」と自分に言い聞かせ、思い切って足を前に出しました。身体が宙に浮き、風を受けながら滑っていくと、怖さは爽快さに変わりました。終点に着いた瞬間には、年齢も立場も忘れ、応援してくれた中学1年生たちと一緒になって喜んでいました。
人の心の内は、外からは見えません。
立ち止まっているように見えても、迷いながら、前へ進もうとしていることがある。
自分の中で気持ちが定まり、行動に移せるようになるまでには、その人なりの時間が必要なのです。
あの時、中1 の皆さんは、私が動き出すまで待っていてくれました。その時間があったからこそ、最後は自分で気持ちを決めることができたのだと思います。
私も、目に見える変化を急いで求めず、その時を待てる人でありたい。
この夏の林間学校での小さな体験を通して、私はそのことをあらためて実感しました。
これからも忘れずにいたいと思います。
明日も皆さまにとって素晴らしい一日となりますように。
ごきげんよう。
