OTSUMA JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

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2学期が終わりました

皆さま、ごきげんよう。

2025年もあと2週間余り。本校も、本日無事に2学期を終えることができました。高校終業式での校長のことばをお届けいたします。

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先日、一人の中学生が校長室を訪ねてきました。

「私には好きな教科があり、それを大学で学びたいと思っています。ところが親からは、今の社会に役立つから理系を選びなさいと言われます。理系も嫌いではありませんが、本当に学びたいのは別の分野です。社会の役に立たない教科に価値はないのでしょうか。学問に優劣はあるのでしょうか」と。

とても大切な問いだと感じました。高校生の皆さんなら、どう答えますか。

結論から言えば、学びに優劣はありません。理系が上で文系が下、あるいはその逆といったこともありません。華々しく成果が目に見える学問も、研究室で地道に積み重ねられる学問も、真剣に取り組まれたものであるなら、等しく価値を持つと私は考えています。

確かに、今の社会に強く求められている分野はあります。医療や科学技術、情報分野は、まさに現代社会を支える重要な柱です。しかし一方で、「今すぐ役に立つかどうか」が先行し、効率を優先して不要なものを切り捨ててしまうことには、私は危惧を覚えるのです。

17世紀、南米からヨーロッパに持ち込まれた「キナノキ」は、先住民が樹皮を煎じて解熱剤として用いていた植物でした。当初は、珍しく少し怪しい標本に過ぎませんでしたが、長年の研究の末、「キニーネ」という成分を抽出する方法が見いだされ、やがてマラリアの特効薬として多くの命を救うことになります。

基礎研究とは、「いつ役に立つかわからない問い」に粘り強く向き合う行為です。一人の人生の中では答えが見つからず、次の世代、そのまた次の世代へと引き継がれ、ようやく実を結ぶこともあります。もし当時、「今すぐ役に立たない研究は無駄だ」と切り捨てられていたなら、キニーネのような成果は生まれなかったでしょう。

歴史を学ぶことも同じです。「過去の出来事を知って、何の役に立つのか」と問われることがあります。歴史は、成功と失敗、対立と和解を繰り返してきた人類の記録です。社会が不安定になった時、人々がどのような選択をし、どのような過ちを犯してきたのかを知ることは、今を見つめ、未来を考えるための大切な手がかりになります。歴史は、考えるための視点を与えてくれる学びなのです。

「今の社会に役立つ学び」は、もちろん重要です。しかし社会は、かつてないスピードで変化しています。「社会に合わせた学び」と信じて取り組んでいても、気づけばずれていた、ということも起こり得るでしょう。だからこそ、自分自身と丁寧に対話しながら学問を選ぶことが必要なのだと思います。そしてこれからますます大切になるのは、年齢を重ねてもなお、様々な分野に関心を持ち、学び続ける姿勢と、自分をアップデートすることを恐れない心だと思います。

人間がこれほど多く存在し、しかも一人一人が全く違っているのはなぜでしょう。それは、ある考えが行き詰まった時、別の誰かの視点や知恵がそれを補い、社会全体が生き延びていくためなのかもしれません。多様であることこそが、人間社会の強さなのです。そういう意味で、皆さん一人一人には、かけがえのない価値があります。自分を「変わり者だ」と思っている人はいませんか。そういう人こそ、社会にとって大切な存在です。自分は「普通だ」と思っている人も、もちろん同じように価値があります。どうか、皆さんには、自分が心から学びたいと思える分野を見つけ、誇りをもって進んでほしいと思います。

高校3年生の皆さんへ

いよいよ大学受験が近づいてきました。受験は、皆さんが選んだ「学び」や「夢」をつかみ取るための通過点です。自分の思いを大切にし、最後まで頑張ってください。これまで積み重ねてきた努力は、必ず皆さんの宝物になります。心から応援しています。

明日から冬休み。どうぞ体調に気を付け、良いお年をお迎えください。そして3学期にまた元気にお会いしましょう。

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明日も、皆さまにとって素晴らしい一日となりますように。

ごきげんよう。

大妻中学高等学校
校長 赤塚 宏子